外部記憶装置

増田貴久くんについていろいろ考えたり思ったり忘れたくなかったりすることを書いておくとこです。

フレンド 10月18日マチネその2

このエントリーで最後まで終わらなかったのでその2としました。「その1」を少し編集しなおしてます。あ、もちろん!セリフは!正確ではない筈です! ご了承ください。記憶の断片を繋いでいます。

 

「安原さん」と呼び「プレゼント」と借りたレコードを渡す秋子。「わたしたちのあいだに、こんなラブがあったの、しらなかったでしょう〜」ひゅーひゅーとはやしたてられ「やめろ」という喜弘の誠実。「でもね」「貧しい娘の家にも、ご近所にも、蓄音機はないんだなぁ〜」驚く喜弘。「読めない横文字眺めて」いたという秋子。歌うように、茶化すように。

 「プロレタリアート諸君、たちあがれー!」そんな言葉は庶民には届かないと喚く秋子。人と意見をかわし合うのが好きな中さんが嬉しそうに「こいつこんな女になっちまったんだよ」と肩を組む。誰か言い返せというがみな口をつぐむ。そこで中也がスタンダールの恋愛論を説く。

「恋する人の心の中には」ザルツブルグの小枝のように「輝く」「結晶作用」が起きる。「この世の美しさ」「この世に深く恋をさせる」 (断片でしかセリフを記憶していない。悲しい。)

貧しい娘の胸の中にもと、秋子の胸に串を当ててお話が終わる。中也の場の支配力。

秋子に「気がつかなかった…」と。まるで気がついていなかった自分に項垂れる喜弘さん。

そのあと、妾の話を受けるという告白。おじさんと乱闘。静かになった店内で秋子と泰子女同士の会話。外に喜さん。レコードの包みを抱きかかえフレンドに入ろうとするところに、おじさんとおばさんが奥から登場し、喜弘ドアをしめて外から中を伺う。

うちの娘になれ、なります、という会話を立ち聞きする喜さん外で号泣。ほとんどコント。「おめでとうごz(… なみだで声にならない)」の演技はいつもやわらかい笑いが起こるシーン。

レコードの包みには手紙が入っていた、と。遺言ってかいてあって、驚いたと。まさかまた会う事になるとも思っておらず墓場に入るつもりで「遺言」を書いた秋ちゃん恥ずかしくて手紙を取り返そうとする。「忘れてください!」「忘れた!」秋ちゃんと喜さんのドタバタ。「きいて…きいて!」

「とても 良い 文章だった」…怪訝な顔で「?」の秋ちゃん。「手紙は実に丁寧で 大人だった」 喜さんらしい、感想。喜弘「このドイツ語を眺めていたの?」秋子「こうすれば、聴こえてきたんです」腰を屈めて、反対側からそっと耳を当てる喜さんの優しさと、秋ちゃんを愛おしく思っている様子。秋ちゃんのことは、触らない。

こんな素敵な場面にドタバタと大騒ぎで入って来る大岡、染谷、中也。人生最高の時間をぶちこわされ憤る秋子。どうして詩集出版にのってこないのか。何故だ!と中也。大岡「売れそうにないからだ」染谷「読者が居るのか?」「喜と泰子か? だったら本にせず手紙で渡せ!」「八つ当たりするな見苦しい」「みんな現実と戦ってるんだ」「忸怩たる思いを」 染谷さんの捲し立ての勢い、この演技がとても好き。忸怩たる思い、という言葉に詰まっている彼自身の辛さ。「殴るなら殴れ!」図星なので殴れない中也。子どものように座り込んで泣く。喜弘やさしくなだめる。「大丈夫ですよ中さん」「こんなところで負けては駄目です」「はじめて中さんの詩を読んだときこの身が震えました」共産主義者をつかまえてないで「権威主義のバカどもを捕まえて」「愚かなペンをへし折ればいいんです」 優しい喜さんの強い言葉。見上げる中さん。

雷、夏の嵐の日。大八車に紙をいっぱい載せてごうさんとていちゃんがフレンドの中に駆け込んで来る。「雷だいじょうぶだった?ごうちゃん」「だめだよ…」せっかく刷った中也の詩集、あと表紙つけて体裁ととのえるだけだけれど資金がなく中断したと。予約が入らず、中也は刷ったそれを捨てるといいだしたので「喜の納屋にかくまう」のだという。その説明をしている途中に雷とともに扉が空き、中也の怒号。ていちゃんと言い争い、「唾をとばすなぁ!」でていちゃんを張り飛ばす。ごうちゃん、奥から再登場、上半身裸、「胸を動かすなぁ!」笑いのシーン。ごうちゃん、中さんと取っ組み合うも雷の音に吹っ飛ぶ。雷が駄目なんだと。(ここ17日、中也、ごうちゃんの演技ツボにはいったのかその後も笑いが残るまま演技し「なんだあいつ…(苦笑)って」。7日でもツボにはいってたな。)

舞台中央でわーわーやってるうちに、喜弘と小林が入ってきている。小林さんが中也の詩集出版に力を貸すと。詩を書いた以外に、ケンカもした、女も買った、と言う中也に、小林「それもお前にとっては詩だろ」。「今の世のほとんどが無責任だ」人をあおるだけあおって中身がないと。形骸化した文学。喜弘と握手しながら小林「中原はいい友人を持ったな」。

小林の褒め言葉と助太刀を受けて中也が叫ぶように詩をうたう。

「我が祈り! 小林秀雄に!」http://www.chuypkpn.jp/14seprch/poem/120.html

神よ、私は俗人の奸策ともない奸策が
いかに細き糸目もて編みなされるかを知つてをります。
神よ、しかしそれがよく編みなされてゐればゐる程、
破れる時には却て速かに乱離することを知つてをります。

 

神よ、私は人の世の事象が
いかに微細に織られるかを心理的にも知つてをります。
しかし私はそれらのことを、
一も知らないかの如く生きてをります。

 

私は此所に立つてをります!………
私はもはや歌はうとも叫ばうとも、
描かうとも説明しようとも致しません!

 

しかし、噫! やがてお恵みが下ります時には、
やさしくうつくしい夜の歌と
櫂歌とをうたはうと思つてをります………

18日の私の席は、この時、視界の中に2人を納める事が出来た。いつも中也を見ていたのだけれど、中也ごしに喜弘の顔を見ることが出来た。なんと表現したらいいのか。真剣なまなざし、畏怖が少し入るような、圧倒されているような。

中也は喜弘に表紙の絵を書いて欲しいという。「魂を込めて書きます」

嬉しくて嬉しくて抱きつく中さんの肩を両手で受け止める喜さん。

櫂歌とはなにか聞かれ、船頭歌だと言う喜弘。最後の部分を引用し歌う。

「しかし…ああ…! やがてお恵みが下ります時には やさしく美しい夜の歌と 櫂歌とを うたおうと思っております…!」優しく、胸いっぱいの気持ちを少しずつ漏らすようにそっと、でも熱量を持って。スポットライトは喜さんの顔を照らす。漕ぎ出す希望の表情。少し上を見つめ、まぶしそうに。

表紙の絵は木版画にしたと秋子に見せにくる。中也のまわりは小林さんと復活して賑やかになってきた。自分も身の振り方を考えないと、と。そこで秋子に「1つきいていい? あの手紙に書いてあったあの決意はまだ有効?」 一生結婚しないというのは本当かと。震災で家族全員失って、もう失いたくない、自分だけ生き残ったし、と辛い気持ちを吐露する秋子。

「どうやったら君の苦しみに寄り添えるのかずっと考えていたんだ」優しいことば。

「一緒に祈ろう」 「死なない」と約束する。「秋子」と呼び、彼女を抱きしめる喜さん。おずおずと手を喜弘の背中にまわす秋子。

 

翌日(?)。

婚約を正式に承諾してもらいに来る喜さんは白のシャツ、ベージュの、麻?綿?のズボン。ネクタイに四苦八苦するおじさん、おばさんはパーマをあててきて。この日「爆撃されたのか」の三郎さんのセリフは違うものになっていたけれど聞き取れなかった。席順を決める三郎さん、おばさんを「パーマネント」と呼ぶものだから爆笑。おばさん素直に座るし。(17日は「パーマ」って呼んでいた。三郎さんアドリブ絶好調)

おじさん「腰は座ってねえよなあ?」ってセリフ好き。それで居住まい正してびしっと「改める」と言う喜弘さんも好き。おじさん「ふつつっつかな(どもる)娘ですが」と頭を下げそのまま土下座。もっと頭を低くし土下座する喜さん。それで秋子以外一同土下座状態。微笑ましい晴れの日。でも、喜弘が、芸術を諦める、教師になる、表紙はボツ、というのが気になる秋子。

入ってきた中也と泰子。「一緒になるのか、秋子と」「はい」この声のトーン。つとめて明るくはっきり言っている。没とは水没とはどういうことか詰め寄る秋子。どぶ川に捨てられた絵を拾ってこいと憤るのを苦痛の表情で後ろから抑える喜さん。ここからの演技がたまらないです。喜さんは声を張り上げたりしない。胸の中で納める。でも苦痛が顔に出る。辛い。目を背けたり、伏せたり、瞑ったり。抑えた声で静止する。「こいつは芸術家の妻にはなれない」「今のうちに俺がぶちこわしてやろうか」 中也の挑発するような言い方。

「中さん…いいかな…」感情を抑えでも抑えきれない少し震える声。

「挫けるのか?」納得がいかない中也。「俺が弱音を吐いたときは」止めたではないかと。お前もやれと。「そうだよ」ほんの少し吐き捨てるようなニュアンス。「中さんは天才だからね。でも僕はそうじゃない。」こんなことを、言わせるな中也!と喜弘さん見て思う。「その輪の中に僕もずっといたかった」「容赦なく気づかされてむしろ清々しいです」「僕には新たな任務が出来たんです。これから秋子と結婚して、子どもをつくり、家族を持ちます。」

離れてしまう、一緒に旅をしないと言う喜弘を受け入れられない中也。暴れる。ていちゃんがお祝いをいってやってくれよ!と言うのに「殴れ喜弘!!殴れといっちょろうが!!!!」訛りが出る。その手を、手首を、ムリやり力で握って胸の前にもってくる、揺るぎない喜弘。

「僕達は、ずっとずっと友達です」「僕はこれから舟をこいでいくんです」「1日働き疲れたら」あなたの作った優しい夜の歌を胸に「明日の為に眠ります」。ぼろぼろの中也。ぼろぼろの秋子。その真ん中に、涙をこらえてまっすぐ中也を見て立つ喜弘。

冬。喜弘を訊ねて来るが今日は横浜の宿舎に泊まるから居ないという。この芝居ではこのあと生きた姿では中也と喜弘は会わない。

秋子に吐露「しょうがないんだ…俺は自分のことだけで精一杯なんだ」。少ししおらしく、少し大人になったような中也が去る。

〜生い立ちの歌〜

 

昭和12年。死。「僕はその苦しみを少しも知らなかった…」「秀雄先生」向き直って「ありがとうござます!」突っ伏して、語気強く。「中さんは 本当に喜んでいましたよ? あなたとの交流が復活して」「秀雄先生じゃなきゃ駄目なんです!」強く。「あなたじゃなきゃ!」弱く。「教えてください 中さんは何があんなに悲しかったんですか」すり寄って懇願し「悲しい 悲しいと いつもいっていました 僕はそれがたまらなかった」悲しい、という時のニュアンスね。

「悲しんだ、んじゃないか」と。良い時に死んだとまで言う少し冷めた視点の小林とは違う、喜さん、泣き崩れ、中さん…中さん…と呼びながら…嗚咽。 

 

ここまで。