ストレンジ・フルーツ 東京千秋楽
わすれないためのメモ。ネタバレだよ?
また追加で書いたり修正したりするかもわからんけど、とりあえずこの状態で急いであげとく。
これの前の日のソワレにもいってるんですけども、それより先にこちらを。
この公演に入れると思ってなかった。プレイガイド電話先行で当たったんですがね。こんな、東京千秋楽なんつー公演に入れるなんてこの先ねーんじゃねーの?
いやぁしかし、ラストって違うものなんですね。なるほどね。
何回か見せてもらった中でこの日が一番よかった、と思った台詞やシーンがいくつかありました。
棺を映す千葉の、「カナ!」。切なく絞り出すような声。もうこれだけでたまらなかった。
私、21日に見た時にやっと泣かないで見られたんですが、千秋楽のこの冒頭で結局また泣かされてしまいまして。
それから、美晴の「きれい…」という台詞。この言い方が私ずーーーっと気になっていて、そこだけ浮いて聞こえてたんですけど、この日はわたしが見た中ではじめて、とても心に入りこむ「きれい…」でした。
で。この後から、泣きそうになったときは双眼鏡を繰り出して千葉をガン見することで冷静さを取り戻すという訳のわかんない行動で涙を凌いだんですが
凌ぎきれなかったのが
アキオさん。
美晴とアキオさんのシーン。
あっちとこっちから出血していろいろテンパってる美晴ちゃんに対して説得の台詞…アキオさん、感極まっちゃって、かすれ声でした。この2人のシーンの美晴がやっぱ今までで一番よかった。で、アキオさんのその最高の演技を呼ぶってかんじなのかなぁ。
舞台って面白いですねえ。
もーねー。
わたしこの前日のソワレで、2階のとっても下手からアキオさんの、美晴を安心させるために見せた一瞬の笑顔の演技を見たんす。そこの笑顔を確認したのはこの日だけだったのだけど、うわ、アキオさんカッケェ、って思った後の楽日だったのでますますですヨ。
アキオさんについてもうちょっと書いておくと、千葉が最後に作った作品は全員の作品がモチーフになっていましたがアキオさんの作品は菩薩でした。その菩薩は、アキオさんが壁に描いていたものではなくアキオさんのスケッチブックにある、少し横からの視点の菩薩で、アキオさんが美晴を見ながら描いているんですよね。逆再生の映像の中で。
アキオさんまっすぐで裏のない良い男だのう。
一方千葉。自分で撒いた腐食剤の結果に驚く…。まだだいぶいい人が残ってるんだよね。1回カナの方に振り向くその顔とか。でもカナは、写真撮るんだぜ。
美晴とアキオさんのシーンで、1人静かに憤ってる千葉の演技も好きです。
時間は戻って行き、犬飼とのアドリブシーン、
多分8日あたりからあそこで笑いととるようになったと思うんですが。まーいろいろとふざけますね。犬飼が千葉(の中の座長)を試すかのような様々な技?を駆使してました。この日なにがあったかは割愛しますが。
このおふざけシーンがあることで、その後の悲劇とのギャップが激しくなってよりよい舞台になったなぁって思ってます。犬飼、ハリー、千葉との戯れ合いも日に日に微笑ましさが増しててかわいらしく。
そのアットホームな様子が「なかよくしてくれてありがとう」に繋がる…のね。ちょっと控えめないい人、千葉くんが、意図せずに最初の裏切りを行ったシーンに。カナが犬飼に言う言葉が、うずくまる千葉に突き刺さる。「おれだろ?」おれのことだろ?
…ありがとうじゃねえよカナ!!(キレる私)
ちょっとシーン戻りまして。
この舞台の全容が解って以降、私が一番楽しみにしているのがクロスロードです。
嘲笑、自虐、虚勢、自負…裏切り。複雑で暗い感情がぎゅうぎゅうに詰まっているシーンを、日を追う毎にますます見事に表現する増田貴久がそりゃぁ最高に私好みの俳優で、たまらなかったです。
ここで親友ハリーを切るんだ。彼が語っていたであろうクロスロード伝説を千葉が形にしオマエはなにもやってないと。
どうしたの千葉くん、じゃねえよカナ!(キレれる私)
ハリーはここでハリーの考えたストレンジフルーツの構想という置き土産を残す。オレがそれを作るのかよ?って顔の千葉ですが、作るんだよね。作ったんだ。ただし、カナの願いもかなえた形で。
最初の(最後の)シーンのカナが、ほんとダサくて、キュートで、天然でかわいらしくて、千葉が「ようちゃん」って呼ばれてる。
ほんとは大好きだけど殺したくなった彼女。殺したくなったから離れたけど大好きだった時のまま、変わらず近くに存在する彼女。
「こわいんでしょう、びびってんだ」と挑発するカナが、ただかわいいだけではなく、この後、千葉に我を失うよう要求していく彼女であることが垣間見えて少し恐ろしかった。
「カナ! 帰ろうよ!」
「…キツいよ…」
「このこわいのどうすりゃいいんだよ!」
「ぼくの作品の
ぼくのカメラの中の作り話だから
大丈夫だよ
ぼくの物語の
主人公にしてやるよ 」
全て作り話にすれば…と無理矢理自分を納得させる術を思いつく。そこから悲劇がはじまる「スタート!」
増田君の演技が、ほんとうに丁寧で繊細でした。目線、手の動き、体の角度。
彼に計算なんか多分なくって、全身全霊で全ての神経を総動員して演技をしておりました。